客船の診療室で働くシップナースは、海外に興味のある看護師にとっては憧れの仕事の一つかもしれません。
シップナースは日本中を探しても、おそらく10~20名ほどしかいない希少な仕事です。
シップナースはどのような仕事内容なのか、看護師は船内でどのように過ごしているのかイメージがしにくいかもしれません。
私はシップナースとして1年間仕事をした経験があり、世界一周クルーズにも行くこともできました。
今回は「シップナースの仕事内容」「シップナースは船内でどんな風に過ごしているのか」について紹介します。
シップナースに興味がある方の参考になればと思います
- シップナースの仕事に興味がある
- シップナースの船内での過ごし方を知りたい
シップナースになるには幅広い経験が必要
私は看護師免許を取得後、大学病院に就職し約6年間働きました。
徐々に海外に興味を持つようになったため退職し、長期休暇の取りやすい看護師フリーランスを7年くらいしました。
看護師フリーランスとしては、クリニック、健診、デイサービス、ツアーナース、病棟夜勤専従などさまざまな仕事を経験。
その間に、海外旅行多数、ワーキングホリデーや、短期の語学留学などを経験しました。
そして究極の旅行系の仕事であるシップナースにたどりつきました。
看護師として多くの職場や診療科を経験したことが、シップナースの仕事につながっていったと思っています。
シップナースの仕事に巡り合うまでの流れは、こちらの記事で詳しく紹介しています。
シップナースの求人の見つけ方を知りたい方には参考になると思います。
飛鳥Ⅱのシップナースに採用
日本一の豪華客船と言われている飛鳥Ⅱに採用され、船内の診療室で働くことになりました。
船内の診療室の体制
医療スタッフの人数
医療スタッフとして医師3人、看護師4人が所属していました。
医療事務も薬剤師も放射線技師もいませんので、医師と看護師で診療に関する業務はすべて行います。
国内クルーズ:医師1人と看護師2人が乗船
海外クルーズ:医師2人と看護師3人が乗船
※乗船していないスタッフは休暇中
診療時間
診療時間は午前中に1~2時間、午後に1~2時間程度と短いです。
その他の時間はオンコール体制。
海外クルーズでは看護師が3人乗船していたので、ローテーションで3日に1度オンコール用のPHSを持ち過ごしていました。
診療室内の医療設備
船内の診療所には、もちろん病院のような設備はありませんが簡単な検査などはできるようになっていました。
診療室内には、レントゲン室があり、レントゲンを撮ることができました。
簡易超音波検査、血液検査の設備もありました。
もちろん、ある程度の輸液もできるように点滴や注射薬も一通りありました。
5人で協力して診療する
私が乗船していた時の海外クルーズでは、医師は2名いましたがどちらの医師も専門が産婦人科でした。
産婦人科医2人ですべての診療科の対応をしなければなりません。
そんな時には、幅広い診療科の経験がある看護師の知識が重要になります。
5人で知恵を出し合って協力して診療しました。
鎖骨骨折のケース
ある時、船内で転倒してしまい、鎖骨を骨折してしまった乗客がいました。
次の寄港地で外国の病院に行き治療をするという選択肢もあったのですが、本人が日本に帰国してからの治療を希望したため、とりあえず船内でギブス固定をすることになりました。その時に乗船していた5人とも整形外科の経験がほとんどなく、ギブス固定をするのには四苦八苦しました^^;
網膜剥離のケース
目が見えにくいと診察室に訪れた方に対して、医師はとりあえず「経過観察」と判断しましたが、看護師の一人が「その症状は網膜剥離かもしれない」と助言。網膜剥離は手遅れになると失明の恐れもあります。看護師の助言により早期対応することができたというケースでした。
入れ歯の不具合
高齢の乗客も多いので、長期グルーズになると「入れ歯が壊れてしまった。何とかしてほしい。」と診療室を訪れる方が何名かいました。入れ歯をみんなで一生懸命に直したこともありました。
船内の診療室では、医療者一人一人の経験値がとても重要な仕事です。
シップナースの仕事内容
診療の介助
主な仕事は診療の介助です。
船内には薬剤師がいませんので、処方された薬を用意し、患者さんに説明する仕事も行います。
必要に応じて、採血や点滴の処置をすることもあります。
夜間のオンコール対応
診察時間以外はオンコール対応です。
けが人、病人が発生すると、まずオンコールナースに連絡がきます。
必要に応じて医師を呼び、診察を行います。
ローテーションで3日に1度程度、診療時間以外のオンコール対応がありました。
夜間の発熱や嘔吐、転倒によるケガなどで呼ばれることが多かったです。
受診の付き添い
診察の結果、医師が現地の病院に受診することをすすめる場合があります。
診療室の仕事以外では、寄港地での病院受診をする場合に付き添うことがありました。
深刻な病状の時には、医師も同行することもありましたが、看護師一人でつきそうこともありました。
クルーズスタッフの健康診断
数カ月に1度、約400名のクルーズスタッフの健康診断がありました。
問診や計測など、健康診断を行う数日間はとても忙しかったです。
船内の救急箱やAEDのチェック
船内の約10か所くらいのところに、救急箱やAEDが設置されています。
それらを定期的に点検します。
水質検査
寄港すると、現地の水を船内に補充します。
港に着くたびに、水が安全基準を満たしているかという水質チェックをします。
シップナースの船内の過ごし方
部屋(クルーキャビン)
日本人の乗組員には、一人一室のクルーキャビンが与えられます。
狭く小さな個室ですが、落ち着く空間です。
自室で本を読んだり、DVDを見て過ごすことも多かったのですが、航海中は、船の揺れが心地よくすぐに眠くなってしまいました^^;
食堂
乗船中の食事は乗組員用の食堂を利用することができます。
ビュッフェスタイルなので好きなものを食べることができ、美味しくいただきました。
デッキ
天気のいい日はデッキに出ることも多かったです。
デッキは1周約400mあり、ウォーキングをしたりジョギングをしている乗組員もたくさんいます。
ぼんやりと海を眺めて過ごす時間も贅沢でした。
船内の施設を利用する
船内にはシアターや劇場、カフェやショップがあります。
シアターではほぼ毎日映画が上映されており、オンコールではない日は映画を観て過ごすこともありました。
劇場では専属スタッフによるダンスやマジックショーなどが開催されたり、ゲストを招いてコンサートが行われることがあり、覗きにいくことがありました。
スポーツジム
船内には乗組員用の小さなジムもありました。
船内の生活では運動不足になりがちなので、ジムを利用して運動をしている乗組員も多かったです。
クルーイベント
時々、バックヤードでは乗組員向けのイベントがありました。
乗組員にはフィリピン人も多く、明るくノリのいいスタッフも多いのでイベントはいつも盛り上がりました。
毎日のんびりと過ごしていました。今考えるととても贅沢な時間でした^^
シップナースの寄港地での過ごし方
船内には「常に必ず医師1人看護師1人が残っていなければいけない」というルールがあるので、医療チームで相談して交代で少し外出することができます。
少し観光してお土産を買ったり、街のカフェでのんびり過ごしたりしました。
医療チーム以外の乗組員とおしゃべりをしながら街歩きをしたりするのも楽しく充実していました。
シップナースで経験できたこと
世界一周を経験
シップナースとして初めて乗船した時には、いきなり4カ月半の連続勤務でした。
まず、南西諸島(横浜~神戸~和歌山~高知~宮崎~種子島~石垣島)辺りのツアーがありました。
船内の生活がすべて新鮮で、ワクワクしながら過ごしました。
そして、そのあとには世界一周のワールドツアーがありました。
横浜港を出発してから約100日間をかけて世界一周のクルーズ旅を経験!
約20か国の寄港地で下船して散策し、景色や食事を楽しめたことはとても贅沢でした。
約100日のクルーズ中には、1週間どこにも寄らず大海原を船で進んでいくということもあり、それも貴重な経験になりました。
初めての世界一周の船旅はかけがえのない思い出になりました。
クルーズスタッフとの交流
船内には、医療スタッフ以外にもたくさんの職種の方がいます。
日本人スタッフは、船長さん、航海士さん、機関士さん、大工さん、調理師さん、受付スタッフ、マッサージ屋さん、美容師さん、カメラマンさんなど。
外国人スタッフは、お掃除やシーツ交換などを行うメイドさん、ウエイターさん、クリーニング屋さん、ショーのダンサーの皆さん、パン職人さんなど。
普段、接することのないような職種の方々とお話する機会が多くあり、外国人スタッフと仕事をしたこともそれもまたワクワクする楽しい経験でした。
看護師になってよかった思えた
看護師だったからこそ、世界一周の船旅を乗組員として経験することができました。
看護学生時代、仕事を始めたばかりの新人時代に頑張って知識と経験を積んできて本当に良かったと思います。
看護師免許とさまざまな場所で働いた経験を最大限に活かすことができた仕事だと思いました。
世界一周の船旅をしてみたい
世界一周の船旅をしてみたいという方にはピースボートもおすすめです。
シップナースとして世界一周するチャンスはタイミングが合わないとなかなかありませんが、ピースボートに乗客として乗船するのであれば、1年に3回のチャンスがあります。
現在、日本発着のクルーズで、もっとも低料金で世界一周の船旅に行けるのはピースボートです。
現在のピースボートは船が大きく豪華。
船内イベントも充実しています。
こちらの記事では、ピースボートの船内のようすや料金などについて紹介しています。
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シップナースの仕事内容と過ごし方 まとめ
この記事では、シップナースの仕事のようすや船内や寄港地での過ごし方などを紹介しました。
シップナースは、実際に経験した看護師が少ないレアな仕事なので、実際の仕事内容や船内での過ごし方がイメージしにくいかもしれません。
今回は、実際に1年間クルーズ船に勤務した経験をもとに記事を書きました。
シップナースの仕事に興味があるけれど情報が少なくて一歩を踏み出せないという方の参考になればと思います。
近々、客船の増加に伴い、シップナースの求人が増えそうです。
普段は求人がほとんど出ないレアな仕事ですが、チャレンジしたいと思っている方はぜひこちらの記事もお読みください!