スイスは、世界で最も進んだ安楽死法制度を持つ国の一つです。
その中でも特に注目されているのが、ライフサークル(Lifecircle)という団体です。
2024年6月2日放送のドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」にて、夫とともにスイスに渡り安楽死を遂げるという女性の決断が大きな話題となりました。
その女性の名前はマユミさん。病名は子宮頸がんの末期。年齢は44歳。
高校3年生と小学6年生の2人の女の子をもつお母さんでした。
マユミさんが安楽死を依頼した団体はスイスのライフサークルでした。
この記事では、スイスで安楽死を提供するライフサークルについて紹介します。
- スイスでの安楽死について興味がある
- ライフサークルについて知りたい
安楽死とは
安楽死(あんらくし)は、耐えがたい苦痛や治癒の見込みがない病状にある患者に対し、その苦痛を和らげるために医療的手段を用いて生命を終わらせることを指します。
安楽死にはいくつかの形態があります。
安楽死の形態
安楽死には主に3つの形態があります。
積極的安楽死
医師や医療者が致死的な薬物を投与するなど、積極的に生命を終わらせる行為です。
消極的安楽死
消極的安楽死とは、生命維持治療を中止し、自然な死を迎えさせる行為です。
例えば、人工呼吸器の取り外しや、栄養補給の停止などがこれにあたります。
自殺幇助(じさつほうじょ)
自殺幇助(じさつほうじょ)とは、患者自身が致死薬を服用することを医師が支援する行為です。
医師が薬物を提供をしますが、実際に服用するのは患者自身です。
安楽死が認められている国
現在、安楽死が認められている国は、スイス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、アメリカの一部の州、カナダです。
安楽死の法律と倫理
スイス
安楽死の一部である自殺幇助が合法であり、ディグニタスやライフサークルといった団体が活動しています 。
オランダ、ベルギー、ルクセンブルク
積極的安楽死が合法です。
アメリカ
州によって異なり、オレゴン州などでは自殺幇助が合法となっています。
日本
現状では安楽死は違法であり、法制化に向けた議論が続いていますが、具体的な法案提出には至っていません。
日本では安楽死は認められていない
現在の日本では安楽死は認められていません。
日本人が安楽死を希望する場合には、安楽死が法律で認められており、かつ外国人の受け入れをしている国に行かなければなりません。
2024年現在、安楽死を希望する外国人の受け入れを行っている国はスイスのみです。
スイスの安楽死を提供する団体
スイスには、安楽死を提供する団体がいくつかあります。
主な5つの団体
Dignitas(ディグニタス)
1998年に設立された非営利団体です。
国際的に知られており、スイス以外の国からの受け入れで有名です。
Exit Deutsche Schweiz(エグジット・ドイチェ・シュヴァイツ)
主にドイツ語圏のスイス住民を対象とした団体です。
Exit Suisse Romande(エグジット・スイス・ロマンド)
フランス語圏のスイス住民を対象に活動しています。
Life Circle(ライフサークル)
スイス以外の国の方も登録可能で、個別対応に力を入れている団体です。
Pegasos(ペガソス)
スイス内外の人々に安楽死を提供しています。
これらの団体は、スイスの法律に基づき、利己的な理由(例えば金銭的利益)によらない限り、安楽死を合法的に提供することが認められています。
外国人の受け入れをしている2つの団体
スイスにおいて、安楽死を提供する団体のうち、外国人の受け入れを行っているのは、「ディグニタス」と「ライフサークル」の2つの団体です。
「安楽死で死なせて下さい」文春新書(2017年発売)を書いた脚本家の橋田寿賀子さんは、ディグニタスの会員であったと言われています。
また、現在がんの闘病中である高須クリニックの院長高須克弥さんもディグニタスの会員になったことを公表しています。
スイスの安楽死協会から会費の請求が来た。払い込んだ。
— 高須克弥 (@katsuyatakasu) February 15, 2020
当分権利行使の予定なし。なう。 pic.twitter.com/sebVSv81yc
ライフサークルは、他の団体と比べると小規模な団体です。
スイスのライフサークル
ライフサークルとは
ライフサークル(Life Circle)は、スイスに拠点を置く2011年に設立された安楽死支援団体で、特に個別対応に力を入れています。設立者はエリカ・プライス(Erika Preisig)医師で、患者に寄り添いながら安楽死を提供することを目指しています。ライフサークルは、患者とその家族に対して深い理解と配慮を持って対応し、安らかな最期を迎えるためのサポートを提供します。自殺ほう助の合法化を各国に訴える活動の一環で、安楽死が禁止されている国の患者も受け入れてきました。
2022年11月、ライフサークルは新規会員の受け入れを終了しました。
代表を務めるエリカ・プライス医師が定年年齢を迎えたことが理由の一つといわれています。
今後は既存会員の支援に注力するとのことです。
2024年現在、日本人が安楽死を希望した際に、受け入れてもらえる可能性がある団体は「ディグニタス」のみということになります。
ライフサークルでの安楽死の方法
ライフサークルでは、医師が薬物を直接的に投与する積極的安楽死は行っていません。
ライフサークルが提供する安楽死は自殺幇助です。
その方法は主に2つあります。
一つは、致死量の薬物が入った飲み物を自ら飲み干す方法。
もう一つの方法は、点滴で致死量の薬物を体内に取り入れる方法です。
点滴を希望すると、医師が安楽死を希望する方の身体に点滴をつなぎます。
最後は本人がクレンメを自ら操作して開通させる方法で、点滴を開始します。
そして30秒ほどで眠るように死に至ります。
安楽死に関連する本
安楽死を遂げるまで
筆者である宮下洋一氏が、実際にスイスの安楽死団体で「その瞬間」に立ち会い、またアメリカやオランダなど6か国を巡り医師や遺族を話を交わすなかで、死に対する考えを深めていくるポタージュの本を紹介します。
安楽死直前の本人や家族、安楽死を提供する医師、日本で患者に安楽死をさせ逮捕された医師のその後などを取材されています。
ライフサークル代表であるエリカ・プライス医師にも取材されていて、彼女がどんな思いで自殺ほう助をしているのかなどについてもつづられています。
生きるとは何か、死ぬとは何かととても考えさせられる本です。
安楽死で死なせて下さい
こちらの本は、脚本家の橋田寿賀子さんが91歳の時に書かれた本です。
橋田寿賀子さんは2021年4月4日、95歳の時に慢性リンパ球性白血病(CLL)による多臓器不全で日本で亡くなりました。
スイスのライフサークル まとめ
現在、世界中の中で安楽死が法律で認められている国は、数か国のみです。
その中で、外国人を受け入れている国はスイスのみ。
スイスには、安楽死を提供する団体はいくつかあり、その一つがライフサークルです。
ライフサークルは現在、新規会員の受け入れを停止しています。
日本人が安楽死を希望する際に、受け入れ可能なのはディグニタスということになります。